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だらだらと書いてます。


by luchino001
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『モーターサイクル・ダイアリーズ』(監督:ウォルター・サレス)

 僕は映画の中でもいわゆるロードムービーというジャンルが好きだ。
 『ベルリン・天使の詩』、『パリ・テキサス』で知られる映画作家ヴィム・ヴェンダースがロードムービーについての話で「motionはemotionを生む」とか言っていたらしい。
 分かるような分からんような言葉だが、何となくその魅力をうまく言い当てていると思う。

 表題の『モーターサイクルダイアリーズ』は後にチェ・ゲバラとなる医大生の“フーセル(激しい男の意)”ことエルネストと生化学者である兄貴分の親友・アルベルトの二人が共に抱いていた夢・南米大陸の探検をする物語である。
チェ・ゲバラという人を知らない方はこちらへ。
 若き頃のチェ・ゲバラが主役ではあるけれども、政治的なメッセージのある作品ではなく、あくまでも普通の一人の青年として彼が旅先で様々な出来事や人々と出会い、変化していく様子が描かれたものだ。
 それは映画の冒頭で語られる以下の言葉からもわかる。
これは偉業の物語ではない
同じ大志と夢をもった二つの人生が―
しばし併走した物語である

 物語はアルベルトの愛車ポデローサ号にまたがって進行する。
 チリのロス・アンヘレスでポデローサ号は廃車となってしまい、それ以後はヒッチハイクで進行することになるのだが、そこからラテンアメリカ深部へと入っていき、二人の旅の様相は次第に変化していく。
 旅先で二人は様々な人々と出会う。
 思想犯として追われる共産主義者の夫妻、貧しい生活を送るインカ帝国の末裔、ハンセン氏病専門の隔離医療施設コロニー『サン・パブロ』の患者達。
 そして各地で出会った人達の眼はエルネストの脳裏に焼きついていった。

 っと、ネタバレになるのでこの辺にしておきます。

 この映画は、いわゆるハリウッド的なジェットコースターのようなストーリー展開や過剰な説明調の演出はない。
 そんな押し付けがましくないところに好感が持てた。
 俳優達の演技も良かったが、特にエルネスト役のメキシコ人俳優ガエル・ガルシア・ベルナルの演技は素晴らしい。しかも男前。
 ナイーヴで情熱的なエルネスト役を完璧にやり遂げたと思う。
 彼が出演した他の作品では『アモーレス・ぺロス』や『天国の口、終わりの楽園』を観たことがあるが、どちらも秀作です。アモーレス・ぺロスにはかなりシビレた。
 監督のウォルター・サレスは『セントラル・ステーション』(ベルリン映画祭・金熊賞、ゴールデングローブ賞受賞)で有名な監督。

 この旅が終わって、アルベルトは医学への道に進んでいくが、エルネストは将来をどうするか決めることなく映画は終了する。
 歴史的事実でエルネストは数年後、カストロ兄弟と共に10人乗りのヨットに85人が乗り込んでキューバへ向かい、銃弾の雨にさらされる日々を送ることになるのだが、映画のラストあたりでは、まさか自分の人生の先にそんな事態が待っているとは想像もしていなかっただろうと思うと、何かいろいろと考えさせられる。

 この映画は大傑作と呼べるほど凄い映画ではないと思うが、僕の心にはかなり残る映画となった。
 衝撃的でもなく躁な感動でもない、心に染み込んでいく感動。
 秋の夜長に楽しむのにお薦めな作品です。

モーターサイクル・ダイアリーズ 通常版
/ アミューズソフトエンタテインメント

関連 モーターサイクル・ダイアリーズ公式ページ
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by luchino001 | 2005-10-02 01:37 | 音楽・本・映画